1913年(大正2年)出版した処女歌集。白秋28歳頃の作品。
「桐の花とカステラの時季となった。…ウイスキイや黄色い
カステラの付いた指のさきにも触れる…しみじみと桐の花の
哀亮をそへカステラの粉っぽい触感を加へて見たいのである。…」
『桐の花』の冒頭は、当時、文明開化の象徴とも言われていたカステラから始まります。白秋が少年時代にすごした柳川は、当時物流の最先端にありました。
カステラも、長崎から舟に乗って、いちはやく故郷・柳川に運ばれていました。
当時、まだもの珍しいカステラに自らの詩作の思いを託す白秋のモダンな感覚、流麗なロマンティズムで彩られ、歌壇に多くの影響を与えました。